ACSにおけるスタチンローディング(SECURE-PCI)
Effect of Loading Dose of Atorvastatin Prior to Planned Percutaneous Coronary Intervention on Major Adverse Cardiovascular Events in Acute Coronary Syndrome
■デザイン:多施設ランダム化二重盲検プラセボ比較施設
■背景:ACSにおけるスタチンのローディングに関して既存の報告はサンプル数が少ないなどエビデンスが限られている
■Population:ブラジルの、ACSの診断で7日間以内に侵襲的治療を受けた患者4191人
■介入:アトルバスタチン80mg*2回 VS プラセボ
※STEMIでは可及的速やかに1回目を投与、24時間後に2回目、それ以外ではCAGの12時間前と2時間前に投与
※その後は、全患者でアトルバスタチン40mg/dayを最低30日間継続
■一次アウトカム:30日MACE(全死亡、急性心筋梗塞、脳梗塞、予定外の再血行再建の複合アウトカム)
■結果:N=4191, 平均年齢 61.8歳、女性は25.9%、30日脱落率は0.7%。64.7%がPCI, 8%がCABG、27.3%が薬物療法を選択。30日MACEはアトルバスタチン群で6.2%、プラセボ群で7.1%(absolute difference, 0.85%[95%CI, −0.70%to 2.41%]; hazard ratio, 0.88; 95%CI, 0.69-1.11; P = .27).
■結論:ACSにおけるスタチンのローディングは 30日MACEを減少させなかった。
感想:
・…という試験なのですが、サブグループ解析が印象的です。
・PCI群に限ると、30日MACEがアトルバスタチン群(n=417)で約7%、プラセボ群(n=448)で約13%と、大きく差が付きました(HR, 0.54; 95% CI, 0.35-0.84; P = .01)。NNT≒16と考えると凄いですね。
(引用:
)・なお、NSTEMIや非PCI群では有意差はありませんでした。
・本研究ではSTEMI, NSTEMI, uAPや、PCI, CABG, OMTが混在しているため有意差がつかなかったものと思われますが、STEMIに対しPCIを行う場合に限ってはスタチンローディングが有効かも知れません。
・MACEの内訳を見ると全体的にスタチン群が低い傾向ですが、はっきり差がついたのはnon-PCI siteのMIでした。ステントの開存性よりも、スタチンのpleiotropic effectsが血管炎症など色々な面でじわっと効いているんでしょうか。
・CABG群に限ると…?記載がありませんでした。本研究ではCABG群が333名と少なく、結論は出なさそうです。
・なお「STEMIにPCIを行う症例」でスタチンローディングの効果を調べたSTATIN-STEMI trial(JACC Cardiovasc Interv. 2012 Feb;5(2):248.)では、80mgローディングでイベント減少傾向が見られましたが有意差は付きませんでした。ただしn=171とサンプル不足だっった可能性があります。
・強く躊躇う理由がないので、個人的にはSTEMIでは出来るだけ早く高用量のストロングスタチンを入れるようにしており、その思いが強くなりました。
・また「FHの疑い」病名をつければ日本の保険診療でもアトルバスタチン40mgやロスバスタチン20mgのローディングまでは可能かな?と思ったりしていますが、今の所そこまでは実行せずにいます。