Heartnote

循環器を中心に読んだ文献などを纏めています

ワーファリンが良好にコントロールされていれば、その後も良好なコントロールが期待できるか?

Outcomes Among Patients With Atrial Fibrillation and Appropriate Anticoagulation Control

JACC, 2018 Volume 72, Issue 12, Pages 1357-1365,

 

■デザイン:後ろ向きコホート研究

■背景:AFに対しVKAを使用中のPtで、現行ガイドライン(ESCやNICE)ではTime in therapeutic range(TTR: 定期的な検査でINRが治療域にある割合) が70%以下の場合にDOACへの変更を推奨しているが、70%を超えた群でDOACへの変更が良いかは決まっていない。そのためTTRが70以上の患者での塞栓イベントや出血イベントのリスクについて研究した。

■方法:Danish National Patient Registry(デンマーク全土の入院レジストリ), Danish Presription Registry(デンマーク内の処方情報), Danish Civil Registration System(全国民の生死の状況). からデータを取得。1997年1月1日から2011年8月22日までにAFに対しVKAが処方された患者18415名のうち、6ヶ月間継続しており、Exclusion criteria (半年で採血が3回未満、50日以上採血感覚が開いている、弁膜症性AFなど)に該当しなかった患者4772名について転機を調べた

Inclusionの際の各群のn数は以下の通り。採血と採血の間の期間のINRは直線的に変動したものと家庭してTTRを計算した。

TTR≧70%:n=1691
TTR<70%: n=3081

■結果:TTR ≧70%の患者で 12ヶ月後も70%を超えていたのは513名 (55.7%) 。また当初のTTRが70%未満であることは、stroke/thromboembolism(HR: 1.14; 95% confidence interval [CI]: 0.77 to 1.70) やmajor bleeding (HR: 1.12; 95% CI: 0.84 to 1.49)とは相関しなかった 。

■結論:AFに対しVKAを使用している患者は、 TTR ≧70% であったとしてもその翌年には半数が70%を下回っており、TTRは良好な管理の予測指標にはならない。

 

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(引用:http://www.onlinejacc.org/content/72/12/1357

Central Illustration:組み入れ時にINRコントロール良好(TTR≧70%)であった患者も、その後1年以内に約半数が70%を下回る(左図)。また、組入時のTTRはStroke/thromboembolism, Major bleedingのいずれとも相関しなかった

 

感想

・もともとワーファリンを飲んでいてコントロール良好なら「別にDOACにする必要もないかな」と考えてワーファリンを継続する、ということは良くあると思いますが、そうとも限らないのでは?という論文(ワーファリン開始わずか半年のコントロールで層別化しているので、厳密には少し違います)

・当初のコントロールが良くても、その後コントロール不良になる可能性が50%近い、というのは感覚より少し多い印象です。

・当然ですが「その後のコントロールも良好であった群では塞栓や出血のイベントが少なかった」ともあるので、頻回にモニタリングして結果的に良好なコントロールが維持できている人は大丈夫なんでしょう

・しかし病診連携の昨今、急性期病院の先生は患者さんを手放すことが多いでしょうし、クリニックの先生は多忙な外来のなかで頻回の調整はなかなか難しいこともあるでしょうから、「きちんと気をつけてれば大丈夫なんでしょ」とも簡単には言えないなぁと思いした。

 

※本論文での「良好なコントロール」は欧米なので一律INR2.00-3.00と定義されているようです。敢えて低めにコントロールされた患者も含まえているかも知れません。